永遠なるボンの教え
ここで紹介する本文はロポン・テンジン・ナムダク・リンポチェとジョン・レイノルズ両氏によって著された「The Condensed Meaning of an Explanation of the Teachings of YUNGDRUNG BON」から「The Teaching of Yungdrung BON」を邦訳したものです。
序章
永遠なるボン(ユントゥンボン)にかんして、第一にそのエッセンスとそしてその分類に付いて考察しなければならない。その教えのエッセンスについて言えば正しい行いと修行をよりどころとし功徳を積み、この功徳が各々を苦しめる障碍を滅する手段となる。
第二にボン教の教えの分類について言えば初めにその主題又は述べられるべきこと、つまり意味によって取り巻かれた永遠なるボンのこと。次にその内容、つまり言葉によって取り巻かれた永遠なるボンのことである。
第一の点(ボン教の主題)について言えば以下のように三つに分類できる。
Ⅰ 放棄の道 spong lam
Ⅱ 変化の道 sgyur lam
Ⅲ 解放の道 grol lam
次に言葉を用いて述べられたことについて言えば二つに分類される。カンギュル(ブッダ・トンバ・シェンラップの信頼すべき言葉)、そしてカンギュルに基づくもの(テンギュル)。まずカンギュルに付いては4っの分類がある。種類ある。
1 スートラ(mdo-sde)
2 般若経(’bum-sde)
3 タントラ(rgyud-sde)
4 コシャ(mdzod-sde) つまりゾクチェン
放棄の道
放棄の道をさらに分類すると悟りへの方法又は悟りへの乗(theg-pa)は三つあるのがわかる。
1.Theg-pa chung-ngu:小さい道またはヒナーヤ(小乗)
2.Theg-pa ‘bring-po:中くらいの道
3.Theg-pa chen-po:大いなる道またはマハヤーナ(大乗)
小さい道から言えば、土台・道・結果について考察しなければならない。独立した自分自身が無いまたは存在しないということを理解するにより土台を得る。道は道徳と瞑想と知恵と言う三重の修行にしたがって実践することから成り立つ。結果とは阿羅漢の位を得ることである。
中くらいの道においても土台・道・結果について言及する。上で述べたように土台は独立した自分自身というものが無いことを理解することから成る。そして主体と言う現象における自分のこの不存在の中で自分自身を体系的に打ち立てる時、道徳と瞑想と知恵と言う三重の修行と、相互依存した12の繋がりのシステムを逆転する修行から道は成り立つ。結果は同じく阿羅漢の位を獲得することである。
大いなる道はさらに二つに分類される。
A:Thugs-rje sems-dpa’i theg-pa:慈悲深い菩薩の道
B:gyung-drung sems-pa’i spros med-pai theg-pa:概念を用いて丹念に作り上げることから離れた菩薩の道
第一に慈悲深い菩薩の体系(唯識論の体系)に付いていえば三つの考察すべきことがある。それは土台と道と結果である。土台はいかなる独立した存在も又は外界的現象における物体も存在しないことを理解することから成り立つ。その意味を理解することによりこの無存在の中に地盤を固めたあとで、道は寛容・道徳・忍耐・努力・禅定・強さ・慈悲・戒・方便・知恵といった十の般若の修行から成り立つ。結果は完全な三身の仏性の獲得である。
概念を用いて丹念に作り上げることから離れた菩薩の大いなる乗(大乗)のシステム(中観のシステム)においても三つの考慮すべき点がある。それは土台と道と結果である。土台とはすべての現象にはいかなる固有の本性も無いことを理解することにより体系的に地盤を固めることである。道は非常に優れた十の般若と四つの集積(つまり寛容・やさしい話し方・意味に沿った実践・弟子の知性の能力に沿った方法に合わせた教え)から成り立つ。結果は完全なる三身の仏性の実現である。
変化の道
第二に変化させる方法の道は四つに分類される。
1.Bye-ba gtsang ye bon gyi theg-pa:清浄なる行いと儀式活動の原始のボンの乗
2.rNam-pa kun ldan nngon-shes kyi theg-pa:あらゆることを知っている明晰知(clear knowledge)の乗
3.dNgos bskyed thugs-rje rol-pa’i theg-pa:ありのままに観想して慈悲を生み出す乗
4.Shin tu don ldan kun rdzogs kyi theg-pa:そこにおいて全てが完全でとても意味深長な乗
清浄な行為を強調する第一のもの(所作タントラ)について言えば、土台と道と結果について考察しなければならない。土台と言うのは調整することなしに自分自身の根源的な状態に留まる心の本性の中に自分自身をシステマティックに確立することである。道については三つの存在の間にいる知者(ye-she-pa)をブッダの姿をした現われだと考えて十の般若の完成などの修行をすること。結果は三身の仏性の実現。
第二に全てを所有する(行タントラ)に付いても土台・道・結果の三つがある。先ず土台については調整することから離れた自分自身の根源的な状態に留まる心の本性に自分自身を確立する。道は知者を兄弟か友人のようにみなし、十の般若の方法によって修行する等から成り立つ。 結果は三身の仏性の実現である。
第三にありありと観想するプロセス(生起次第:bskyed-rim)がある(ヨーガタントラ)に付いて、考察すべきことが土台と道と結果三つある。土台は調整することから離れた自分自身の根源的な状態における心の本性に留まると言うより高い見解である勝義諦(絶対的真理)の中に自分自身をシステマテックに確立することだ。道は主に観想のプロセス(生起次第)の修行強調する。二つの段階(生起次第と究竟次第)によって結果である三身の仏性の実現に到達する。
第四に全てが完全でとても意味深長になる(無常ヨーガタントラ)の方法でも土台と道と結果の三つの考察すべきことがある。先ず初めに土台について言えば、空間と意識が分けがたく溶け合っていて調整から離れた自分自身の根源的な状態という見解の中に自分自身をシステマテックに確立する。道は主に究竟次第(rdzogs-rim)の修行を強調している。そして二つの段階によって三身の仏性の実現と言う結果に到達する。
解放の道
第三に開放の道であるゾクチェンにおいては教えは三つに分かれる。
1.セムデ又は心の部 (sems-sde)
2.ロンデ又は空の部 (klong-sde)
3.メンガギデ又は秘密の教えの部 (man-ngag-sde)
さらに、心の本性自体の状態について、三つの特別なダルマ又は性質がある。そのエッセンスである空性、その本性である明晰さ、その局面である慈悲深いエネルギー(thugs-rje)であり、慈悲深いエネルギーは前二つの非二元性を表している。これら三つの性質が存在するので、意図的修行しそしてシステマテックに(心の本性の中に)自分自身を確立することによって、セムデ・ロンデ・メンガギデという三つの方法が生まれる。
メンガギデに従えば、土台とは明晰さと空性の統一であり、道はテクチュの修行とトゥゲルの修行から成り、結果は三身の仏性の達成である。
教えの輪
上で意味について考察したので、さらに今度はこの意味を解釈するための媒介に目を向けて見ると、勝者であり完全なるブッダ シェンラブ・ミオゥ・クンレ・ナムパル・ギャルワによって説かれた教えは三つの連続した輪を説いたものから構成される。(1)第一にトンバはボンの九乗(theg-pa rim dgu)を説いた。(2)中期には四門とその五番目にあたる蔵(四門五蔵:sgo bzhi mdzod
lnga)を説いた。(3)最後に外、内、秘密の教え(phyi nang gsang gsum)を明らかにした。その主題の意味に従って、トンバははじめに世俗諦(相対的真理)を説き、中期には二つの真理を等しく説き、最後に勝義諦(絶対的真理)を説いた。それに対応してこれらは言葉を用いて説明された。はじめにトンバはボンの九乗を説き、中盤には四門五蔵を説き、最後に外、内、秘密の教えを説いた。
五科学
上で述べたこれら三つの中からトンバは先ずはじめにボン教の科学と教義も説いた。トンバが最初に説いた教えは五科学(rig-gnas lnga)に含まれ、第二に説いたものはこれら最初の教えの中でもボンの九乗(theg-pa rim dgu)に含まれると言われるた。これら最初のものについて短く言えば以下のとうりである。
1:外科学(phyi rig-pa)
2:内科学(nang rig-pa)
3:技術と技巧(bzo rig-pa)
4:医薬科学(gso rig-pa)
5:言語科学(sgra rig-pa)
九乗―最初の輪
ボンの九乗について言えば、勝者シェンラブ・ミオゥの教えがチベットの国に拡がった後、三度にわたるボン教大迫害の中のはじめの二つの迫害が起こった。その前に教育も受け覚醒も達成したある人たちは儀式の分類化を含むボン教の教義全体に渡る決定的な分類付けを行い、その後埋蔵経としてこれらの教えを隠した。その結果南チベットのティク・ツァム・ターカル(Brig-mtshams mtha’
dkar)とブータンのパゴ(spa-gro)からから取り出されたテルマ(埋蔵経)のシステムは南伝埋蔵経(lho gter)として知られることとなる。シャンシュンのラタク(lha dag)とチベットの北にあるワンラ・キュンゾン(Dwang-ra khyung rdzong)から取り出されたこれらのテルマは北伝埋蔵経(byang
gter)として知られるようになる。最後に中央チベットにあるサムイエとイェルピータク(Yer-pa’i brag)から取り出されたその教えは中央埋蔵経として知られるようになる。
南伝埋蔵経のシステムに従ってボンの九乗の名前を挙げれば、以下のようになる。
1:Phywa gshen theg-pa:予言のシェンの乗
2:sNang gshen theg-pa:目に見える現われ(現象世界)のシェンの乗
3:‘Phrul gshen theg-pa:魔法の力のシェンの乗
4:Srid gshen theg-pa:存在のシェンの乗
5:dGe-bsnyen theg-pa:徳を積んだ俗人(在家信者)の乗
6:Drang-srong theg-pa:聖人(僧)の乗
7:A-dkar theg-pa:白い色をした「あ」の乗
8:Ye-gshen theg-pa:原初のシェンの乗
9:bLa-med theg-pa:非常に優れた乗(ゾクチェンのこと)
第二にシャンシャン・マのような北伝埋蔵経に従ってボンの九乗の名前を挙げれば
1)To-tho と 2)sPyi-thoと 3)Yang-tho の三つ。
4)sNang-ldan と 5)Rang-ldanと 6)bZhed-ldan の三つ。
7)Lha-rsteと 8)sNang-rtse と 9)Yongs-rtse の三つ。
第三に中央埋蔵経のシステムに従ってボンの九乗の名前を列挙すると
1:Lha mi gzhan bsten gyi theg-pa:相互依存している神と人の乗
2:Rang rtogs gshen rabs kyi theg-pa:おのずから理解する者とシェンラブの追従者の乗
3:Thugs-rje sems-dpa’i theg-pa:慈悲深い菩薩の乗
4:gYung-drung sems-dpa’ spros med-pa’i theg-pa:いかなる概念的を用いて作り上げることから離れた菩薩の乗
これら四つは原因の乗(rgyu’i theg-pa)として知られている。
5:Bya-ba gtsang spyod ye bon gyi theg-pa:清浄な行いと儀式行為の原初のボンの乗
6:rNam-pa kun-ldan mngon-shes kyi theg-pa:全ての局面を知る明晰知の乗
7:dNos bskyed thugs-rje rol-pa’i theg-pa:ありありと観想する慈悲の表れの乗
8:Shin to don-ldan kun rdzogs kyi theg-pa:全てが完全でとても意味深長な乗
9:Ye nas rdzogs chen yongs rtse bla-med kyi theg-pa:原初の大いなる完成である至高の優れた乗
これら上記の四つは秘密マントラの結果の乗(’bras-bu’i theg-pa)として知られ、九番目の乗と共にある。
四門五蔵-第二の輪
中期の教えについて言えば四つの門と五番目の蔵として説明されていた。
1:Chab dkar drag-po sngags kyi bon:激しいマントラのボン
2:Chab nag srid-pa rgyud kyi bon:(現象)世界の伝説
3:‘Phan-yul rgyas-pa ‘bum gyi bon:広範囲にわたる般若のボン
4:mTho thog spyi rgyug mdzod kyi bon:至高かつ全般的な宝庫のボン
5:dPon gas man-ngag lung gi bon:アーガマ(阿含)とマントラによる成就のボン
最後の輪
教えの最後の輪については外内秘密の三つが説明された。
1:外とは放棄の道、つまりプラマナ(認識根拠)又は哲学の一連。
2:内とは変化の道、つまり秘密のマントラの一連。
3:秘密とは開放の道、言うならば大いなる完成又はゾクチェンのボン。
四つの原因の乗
これらの四つの原因の乗は南伝埋蔵経のシステムに属している。それらにはチベットの民族習慣や並外れた教育システムが含まれている。これらの方法は以下のとおりに記述されるであろう。
1:Phywa gshen theg-pa(予言のシェンの乗)においては、占い(mo)、宇宙論(rtsis)、儀式(gto)そして医薬の診断(sman
dpyad)が解説されている。占いによって運や長寿や富に関する利益と害の根本的な原因と補助的な原因がわかる。儀式を執り行うことによって害の原因となるさまざまな種類の否定的影響を打ち消す。診察によって病の根本的原因と補助的な原因を知ることができる。そして利益のために薬を用いてこれらの病は癒される。
2 :sNang gshen theg-pa(目に見える現われのシェンの乗)においては、加護を与える神々を召喚したり、人々のために富や幸運を呼び寄せるような儀式によって害の原因となる魔を駆逐する。また命を守るためや長寿のための儀式もある。
3:‘Phrul gshen theg-pa(魔法の力のシェンの乗)においては、魔法の力によって生き物や教えを害する原因となる魔や悪の精霊や誤った導き手を抑えつけ燃やし駆逐する。
4:Srid gshen theg-pa(存在のシェンの乗)においては、死んだ者を幸福な世界に生まれ変われるように導き、悪い精霊が死者の邪魔をしないようにする。また生き物の幸運や健康を約束する儀式に従事したりする。こうした方法はチベットの国中で知られていたし、チベット人の民族習慣を代表している。
John Reynolds 訳
South Devon,May 1991
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