ボン教のマントラ オムマティムイェサレドゥ

 ボン教の伝統において最も重要なマントラはオムマティムイェサレドゥであり、ブッダ トンバ・シェンラップ・ミオゥチェ(sTon-pa gShen-rab me-bo-che)とその明妃大いなる智恵の女神 シェ-ラップ・チャムマ(Shes-rab Byams-ma)への重要な礼讃文であり、また六道の世界それぞれに現れて苦しみを緩和し六道の世界に囚われている全ての生き物を自由にするトンバ・シェンラップの六つの化身への礼讃文でもある。後者のものは六人のドゥルシェン(’Dul gshen drug)、つまり(六道に住む全ての生き物を)改宗させた六人のシェン、として知られている。このオムマティムイェサレドゥのマントラに含まれる八つの音節に相当させてみると、これら光る人物達は次のように一覧表にできる。

 

OM

トンバ・シェンラッブ(sTon-pa gShen-rab)は般若(thabs)と慈悲(thugs-rje)を象徴している。彼の色は宝石のような色(rin-po-che)。

 

MA

シェーラッブ・チャムマ(Yum-chen Shes-rab Byams-ma)は智恵(shes-rab)と大空(klong)を象徴している。彼女の色は赤(dmar-po)。

 

TRI

ムチョ・デムトゥク(Mu-cho lem-drg)は完全な愛と友好を(byams-pa chen-po)用いて怒りと憎悪(zhe-sdang)を変化させて、地獄の世界を浄化する。彼の色は青と赤(sngo dmar)。

 

MU

サンワ・ンガクリング(gSang-ba ngang-ring)は完全な寛容さ(sby-in-pa chen-po)を用いて貪欲さと欲望(’dod-chags)を変化させて、餓鬼(yi-dwags)の世界を浄化する。彼の色は赤。

 

YE

ティサング・ランシ(Ti-sangs rang-zhi)は完全な知識と智恵(ye-shes chen-po)を用いて無知と混乱(gti-mug)を変化させ、動物の世界(byol-song)を浄化する。彼の色は青(sngon-po)

 

SA

タチン・プングパ(Gra-byin spunga-pa)は完全な大きさ(yangs-pa chen-po)を用いて妬みと嫉妬(phrag-dog)を変化させて、人間世界を(mi)を浄化する。彼の色は金色の光(gser ‘od)。

 

LE

チェギャル・パルティ(lCe-rgal par-ti)は完全な平安(zhi-ba chen-po)を用いて自尊心や傲慢さ(nga rgyal)を変化させて、阿修羅(lha mi)の世界を浄化する。彼の色は水色(sngo-skya)。

 

DU

イェシェン・ツゥプ(Ye-gshen gtsug-phud)は完全な勤勉さと活力(brtson-‘grus chen-po)を用いて怠惰と不精(le-lo)を変化させて、神々の世界を浄化する。彼の色は白(dkar-po)。

 

 次にマントラ・オムマティムイェサレドゥとその意味に関する二つのボン教の経典(1.bzlas chog rin-chen sgrol-ma’i lha tshogs dang snying-po bcasと2.Ma-tri’i bskul ma tshigs su bcad-pa)からの妙訳を示す。いっしょに掲載してある六人のドゥルシェンは前者の経典に由来している。

                                        Vajranatha

 

 ここではマティ・マントラであるオムマティムイェサレドゥの懇願の詩が収められている。

 

エ・マ・ホ

われわれの頭頂にある祝福の宮殿の中に

教えの尊い君主(トンバ・シェンラッブ)、

彼から生まれた六つのドゥルシェンの化身と彼の四人の霊性の息子たちは

陰りも無く光りの身体をして鎮座している

我々は献身する心をもって祈ります

彼らの祝福と恩恵を乞う者たちが

マティムイェの音節を高らかに美しい旋律で唱えることだろうと

 

オム マ ティ ム イェ サ レ ドゥ

あぁ 生きている幸運なる者ども

この宮殿に集っている神々と人間たち

われわれは無知で覆われ迷っているゆえに

われわれの意識を構成する要素を制御するに及ばずに

六道輪廻の世界の中を彷徨うのだ

肉体という有形の物質を取り上げてみたとしてもそれは幻で、

さまざまな苦しみを経験する。

しかし慈悲の心をはぐくみ、

それは自由からかけ離れた輪廻の仕組みの中にとどまっている者達のためであったのだが、

そしてわれわれ自身この苦しみから逃れてきて

今は自由解放への路上の旅人である

幸福なる土地への到達を願う者どもならば

マティムイェの音節を高らかに美しい旋律で唱えるのがよかろう

 

オム マ ティ ム イェ サ レ ドゥ

あぁ 生きている幸運なる者ども

長い流れは誕生である

水の源にいる龍は老いである

沸き立つ波は病で

そして死には自由は無い

まさにこの四つは四つの水であり

自由を拘束するドゥの悪魔が支配している

この水を渡ろうと願う者どもならば

オムマティの音節を高らかに美しい旋律で唱えるのがよかろう

 

オム マ ティ ム イェ サ レ ドゥ

あぁ 生きている幸運なる者ども

荒れ狂う輪廻の海

苦海の底なしの深さ

不幸の沸き立つ波

そして自由など無い深淵への落下

これら四つの海は苦しみという牢獄の象徴

その牢獄からの自由を願う者どもならば

オムマティのマントラを高らかに美しい旋律で唱えるのがよかろう

 

オム マ ティ ム イェ サ レ ドゥ

 

Vajranatha 訳

 

 

 次にハートマントラと共に生き物を自由にする守護神へ捧げる暗誦文と儀式が収められている。                                    

 

オムは師(シェンラッブ・ミオゥ)自身の神聖な姿の象徴

彼の賢明な手段と慈悲によって全ての生き物を改心させている

彼は全てのものにとってのかけがえの無い父親である

マはトゥクジェ・チャムマ自身の象徴

その空のように広大に広がる海は母のような存在で、全ての生き物がそこから生まれてくる

彼女は全ての知識(と知恵)の根源的な土台で

(全ての師匠の筆頭であるブッダに付いて言えば

彼の身体の色はまるで貴い宝石のようで彼は八つの局面の所持者である

一面二臂の御身体で報身の身飾りをお召しになっている

右手にはチャクシン(卍の勺)

左手はムドラー(手印)を組んでいる

神聖なる母トゥクジェ(慈悲)について言えば赤いお身体

甘露の壷を抱きしめそのお身体は貴い宝石の飾りで飾られている)

ティはムチョ・デムトゥクの象徴

その大いなる慈しみの慈悲で全ての者を熱地獄と寒地獄から守もり

地獄の全次元の征服を成し遂げる

(ムチョ・デムトゥクについて言えば、紫の身体で宝石の冠を戴いている

水と風の長いスカーフをお身体に召されて、握り締めた火と水の旗がシンボルである。)

ムはサンワ・ンガクリングの聖なる姿の象徴

その大いなる寛容さをもってあらゆる空腹と渇きを満たし

飢餓の全次元の征服を成し遂げる

全ての貪りを寛容さの広大な広がりの中に融解させている

(サンワ・ンガクリングについて言えば赤いお身体

宝石の飾りを頭に戴き青い絹のローブを召している

彼は頭に甘露の壷を載せている。)

イェはティサング・ランシの聖なる姿の象徴

その大いなる知恵をもってあらゆる愚かさを取り除き

動物の全次元の征服を成し遂げる

全ての混乱を知恵の広大な広がりの中に融解させている

(ティサング・ランシについて言えば青色のお身体

王冠を頭に戴き

オレンジ色の外套をそのお身体に召されている

手にしたランプを高く掲げている。)

サはタチン・プングパの聖なる姿の象徴

その大いなる包容力を持って全ての妬み(と嫉妬)を征服し

人間の全次元の征服を成し遂げる

全ての妬みを包容の広大な広がりの中へと融解しつつ

(タチン・プングパについて言えばそのお身体は金色に光り輝いている

宝石の冠を戴き

虹のローブを身に着けて

手にした黄金の卍の勺がそのシンボル)

レはチェギャル・パルティの聖なる姿の象徴

その大いなる平和の心で自尊心を消滅させ

阿修羅の全次元の征服を成し遂げる

全ての自尊心を平和の心の広大な広がりの中へ融解しつつ

(チェギャル・パルティについて言えば水色のお身体

頭に王冠を戴き

黄金のヘルメットと黄金の鎧のコートを身に着けている

手にしているサーベルがその象徴)

ドゥはイェシェン・ツゥプの聖なる姿の象徴

その大いなる勤勉さを用いて怠惰を消滅させ

神々の全次元の征服を成し遂げる

全ての怠惰を勤勉さの広大な広がりの中へ融解しつつ

(イェシェン・ツゥプについて言えば白色のお身体

頭に宝石の冠を戴き

光りのローブを身にまとっている。

手にした光が輝くウットパーラの花がその象徴)

 

オム・マ・ティ・ム・イェ・サ・レ・ドゥ

 Vajranatha 訳

 

 本文は「The Condensed Meaning of an Explanation of the Teachings of Yungdrung Bon」より「The Great Mantra」の日本語訳です。

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